アイ・ラブ・スウェディッシュデザイン

 

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Vol.21 (2003/10/05)
多彩な才能のアーティスト、スティグ・リンドベリ 」

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本日は、ミッドセンチュリーの代表的なデザイナー、スティグ・リンドベリについてご紹介します。以前のメルマガでもグスタヴスベリのお話しの時にご案内させていただきましたが、この度スティグ・リンドベリの本が出版されましたので、そのご案内をしたいと思います。



"Tusenkonstnären STIG LINDBERG"
今年の9月についに最新のスティグ・リンドベリの本が出版された。その題名は上記の通り。  Tusenkonstnärenとは「なんでも 器用にこなす人」という意味で、その名の通り、リンドベリはセラミックデザインの他、工業デザイナー、ガラス、エナメル、プラスチック、そしてテキスタイルデザイナーやイラストレーターとしてもすばらしい才能を発揮したミッドセンチュリーのスウェーデンを代表するアーティストで す。

スティグ・リンドベリ。1916年誕生、1982年没。グスタヴスベリのテーブルウェアや手描きのセラミックが世界的に有名。第2次世界大戦後のスカンジナビアモダニズムとして世間に広く認められるようになり、彼の作品は、スカンジナビアデザインの典型として親しまれるようにな りました。


ミッドセンチュリーの人気テーブルウェア
(注:リンドベリ以外の作品もあります)

 



色彩豊かな手描きのファイアンス焼き


ドミノシリーズ

白黒のドミノシリーズは1955年に南スウェーデンのヘルシンボリで開催された展示会「H55」のシンボルでもあります。H55では、スウェーデンのデザインが世界で認識されることになった作品が多く出展されました。


スティグ・リンドベリ手描きのサイン

スティグ・リンドベリは、ひとりの人間がものを作る場合、その作品に責任を持つ意味で、作品にはサインを入れるべきという考えの持ち主でした。彼は自分の手描きによる作品には必ず裏面にサインを記しています。 手とGの文字が入っているのが工房で作られた作品という意味で、青い文字で書かれているのがリンドベリの作品です。ちなみにこのサインについての解説も本に書かれています。

今回スティグ・リンドベリの本を出版したジャーナリスト、ギセラ・エノン氏は、数年前のあるセラミックの講義の中で、スティグ・リンドベリのことを書いた本が長いこと出版されていないことを聞き、それならばいつか自分が書いてみようと思いました。 リンドベリはアーティストで工業デザイナーであり、グスタヴスベリ陶器工場でアートディレクターを務めました。ユニークでエレガントで遊び心のあるすばらしい作品を数多く手がけ、スウェーデンの家庭に彩りを与えてくれた人物です。 エノン氏は今回本を出版するにあたり、リンドベリの知り合いや親戚に話しを聞き、昔掲載された彼の記事や本に目を通しました。 スティグ・リンドベリという大きなジグソーパズルのピースをひとつずつ埋めていくうちに、奥が深くてエキサイティングな人物像が浮かび上がり、彼をより身近に感じられるようになったそうです。 この本はリンドベリの作品集というよりも、もっと彼自身について表現されています。リンドベリの作品をひとつでも持っている人々が、彼についてより理解を深め、作品そのものにより愛着を感じていただければ幸いである、と記しています。

スティグ・リンドベリは1916年にスウェーデンの北部にあるウメオで中流家庭の5番目の子供として生まれました。 音楽が好きであったスティグは将来は音楽家になりたかったのですが、指に怪我をしたことがあり、その後遺症のため音楽の道に進むことには不安があったため、仕方なく絵の講師の道を選んだと1949年の新聞記事が記載しています。

美しい手描きのファイアンス焼きはスティグ・リンドベリの代表作のひとつですが、ファイアンス焼きが作られたのは、ちょうど第2次世界大戦の時期です。スウェーデンは大戦には不参加でしたが、物資不足などの痛手は味わっていました。 磁器工場でも物資や人手不足は深刻でしたが、そんな暗い時期に製作されたリンドベリのカラフルな花模様のファイアンス焼きは、人々に明るい希望を与えるものでした。

第2次大戦真っ最中の時代であったリンドベリの時代のスウェーデンの住宅事情はあまりよくありませんでした。そんな住宅事情を少しでもよくすることに貢献したのもリンドベリです。 そして狭くてつまらないキッチンに、彩り鮮やかな夢を与えるテーブルウェアがスウェーデンの各家庭に広まったのもこのころです。

今でもアメリカ、イギリス、日本からコレクターたちがスウェーデンにやってきてリンドベリの作品を捜し求め、オークションでは高値で取引されています。時代を超えてますます人気の高まるリンドベリの作品は、この本の出版によって今後ますますその価値が高まるかもしれません。


カーニバルシリーズ

1950年代に製作されたファイエンス焼きのカーニバルシリーズは、リンドベリらしさが特ににじみ出ている今でもコレクターが絶えないほどの人気シリーズ。