アイ・ラブ・スウェディッシュデザイン

 

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Vol.47 (2005/04/05)
身体に負担のかからないデザイン

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「身体に負担のかからないデザイン」は、生活環境や職場環境をよくしてくれます。今回ご紹介するデザインは、エアラインに勤務する客室乗務員の負担を軽減してくれるポットと、腕の力に限界がある人でも使いやすい ボディケアシリーズです。

 

最近スカンジナビア航空に乗ったのですが、客室乗務員が使っているポットに目が行きました。私が大ファンのデザイン企業「エルゴノミデザイン社」が手がけたポットが使われているのです。前回フィンランド航空に乗った時も、機内ではこのポットが使われていました。今では濃紺のポットに加えて、明るいオレンジのポット が主流のようです。

このポット、何が優れているかと言うと、その卓越した機能です。スカンジナビア航空から機内用ポットのデザインを依頼されたエルゴノミデザイン社は、従来のポットの問題点を念入りに研究しました。エアラインの客室乗務員にとって、ポットはコーヒーや紅茶をお客様にサービスする際に欠かせない備品です。 重い液体のたっぷり入ったポットを片手で持ってサービスすることが長く続くと、腱鞘炎なる恐れもあるのです。そこで既存ポットの問題点を次のように挙げました。

1、ハンドルの部分を改善するべき
2、ユーザーの腕や手首への負担を軽減するべき
3、全体の重量を減らすべき
4、注ぎ口から液もれしないように改善するべき

ハンドルとポットの重心との距離を縮めることにより、問題点は解決しました。ハンドルを長くすることにより、どのような体勢で注いでも、腕への負担が 軽減されるようになりました。液もれも注ぎ口を二重にすることで解決しました。

このポットの出現により、客室乗務員の負担がかなり軽減されるようになったのです。年齢を重ねた乗務員が多くても、備品に工夫を加えることで、いつまでも元気で働くことができるようになりました。もちろん、若く、力のある乗務員たちにとっても、とても使いやすいものとなり、評判が評判を呼びました。

その後、このポットは世界の30以上のエアラインで採用されています。

ところが、残念ながら日本のエアラインは採用していません。このポットの存在を知らないのかもしれませんが、それよりも、客室乗務員の職場環境をよくするために いい備品を採用するということに、それほど積極的ではないとも言えるで しょう。日本では、未だに従業員の使い捨て感覚があり、身体を壊したらハイ、サヨナラという風潮が残っているように思います。 また、若い客室乗務員が多いのも、日本やアジアのエアラインに見られる傾向に思います。

身体に負担のかからない良いデザインの備品は、価格もそれなりに高価になります。しかし、それによって健康を維持できるのでしたら、返って安くつくと言えるでしょう。日本の企業も、もっと従業員の身体を考えて、職場の椅子や机なども、身体に良いデザインを採用していくことに積極的になっていってくれることを願ってやみません。

 


スカンジナビア航空のために
デザインされた機内用ポット




エタック社のボディケアシリーズ

こちらは、腕が上がらない人のためのボディケアシリーズです。ポットと同じくエルゴノミデザイン社が手がけました。

身体が不自由になっても、自分の身は自分で整えたいと思うのは当然のことです。このボディケアシリーズは、身体の動きに限界のある人々の自立を助けるために開発されました。腕を上げられないなど、身体の動きに限界がある場合、髪をとかしたり、身体を洗うことに困難を感じます。このボディケアシリーズは、腕を上げることなく、髪をとかしたり、身体を洗うことができます。頭のカーブに沿ったハンドルで、背中まできれいに届いて、思う存分洗うことができるのです。髪をとかすためのブラシからクシまでいろいろなタイプが揃っているので、自分の好きなようにヘアケアができます。

エルゴノミデザイン社は、このように人々の役に立つ、身体の負担を軽減するデザインを多く手がけています。スウェーデンが高齢社会に突入し始めた1970年代から、身体に限界のある人々のための商品開発の研究を重ねてきました。そして今日本は高齢社会に突入し、このよう な商品が必要とされる時代へと入ってきました。 社会環境では日本の先を行くスウェーデンには、日本が参考にするべき技術を持った企業が多数あります。そのひとつであるエルゴノミデザイン社はデザインが主な仕事なので、商品の販売は行っていません。通常メーカーと提携して新商品を開発しています。今後日本でも、高度な技術とアイデアを持ったこのような企業の助けが必要になってくるのではないでしょうか。

エルゴノミデザイン社では、現在すでに世に出ている商品の改良点を指摘してくれる「デザイン診断」をしています。新しく商品を開発するよりも手軽に改善できるため、スウェーデン国内やヨーロッパの企業が利用しています。全く新しくデザインを依頼するよりも、まずはこういったサービスを利用してみるのもいいかもしれません。ユニバーサルデザインが叫ばれている昨今の日本では、ユニバーサルデザイン先進国であるスウェーデン企業はいい参考になることでしょう。

エルゴノミデザイン社の「デザイン診断」の詳細は、スウェーデンスタイル・コムまでお問い合わせ下さい。
info@swedenstyle.com