ニルスの摩訶不思議な旅

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第5回 スウェーデンの社会システム・子供たちの場合

2002.3.5

ヘイサン。ストックホルムよりこんにちは。

2月中旬で気温が8度あった暖冬のストックホルムでしたが、2月末になって0度からマイナスになり、雪も積もっています。3月もまだ冬のストックホルムでは、まだまだ油断はできません。

前回の「ベビーカー天国」では多くの反響をいただき、ありがとうございました。このお話しを直接JRにお伝えいただけませんか、というメールをいただき、JRのウェブサイトからメールを送ってみました。ウェブサイトには、駅のバリアフリー化について、エスカレータの設置に力を入れていくとありましたが、本当のバリアフリーを目指すのであれば、エレベータにすべきと意見したところ、貴重なご意見をありがとうございましたと丁重なお返事をいただき、バリアフリー化のサイトには早速エレベータの整備も付け加えられていましたので、今後のJRの施設向上に少しは期待が持てるかもしれません。

さて、スウェーデンの福祉を含めた社会システムに興味をお持ちの方が多いようですので、しばらくはスウェーデンの色々なシステムについてお話ししたいと思います。スウェーデンでは、社会的弱者に対してのサポートがとても進んでいるように思います。高齢者だけでなく、子供、小さな子供のいる人々、ハンディを持っている人々、移民、失業者などに対してです。前回のベビーカー天国もそのひとつでしょう。今回は、子供たちの場合についてお話ししたいと思います。

スウェーデンでは、日本のニュースで最近よく耳にする幼児虐待はほとんどありません。子供に手を上げることは、法律で禁止されているのです。たとえ親がしつけのために子供をたたいたとしても、子供はそれを訴えることができるそうです。たたくしつけということはスウェーデンではありえません。

成人と言われる年齢は、高校を卒業する年、18才です。この18才までに、子供たちは様々な恩恵を国から受けることができます。まず、産まれた時から18才まで、毎月10000円弱の児童手当を受けることができます。子供が小さいうちは、保護者宛てに入金されますが、子供が自分でお金を扱える年齢になると、子供名義の口座に振り込むこともできます。そして、18才になるまで、歯の治療を含めた医療費は全て無料です。居住地区の歯科医で定期的に歯の検診が行われ、学校では歯の磨き方を教えられ、歯の矯正も無料でできるので、スウェーデン人は虫歯が少なく、歯がきれいな人がとても多いのです。

スウェーデンの義務教育期間は日本でいう小学校と中学校が合わさった9年間の基礎学校ですが、公立学校では教科書を含めた授業料も全て無料です。私立学校は有料ですが、インターナショナルスクールやフリースクールなど特殊な学校である場合が多いので、ほとんどの子供たちは居住地区の公立学校に通います。

給食も無料で、学校のカフェテリアで学年ごとに昼食の時間帯をずらして取ります。また、教科書は毎年使いまわしており、書込みは禁止されています。子供たちは学年の初めに、ややボロボロになった教科書にカバーをかけて1年間大切に使います。ノートやえんぴつも学校から支給されます。地区によって様々ですが、ストックホルムの学校では1クラスが約20人、2人の先生が2クラスを受け持ちます。ですから、子供たちにとっては20人ほどのクラスに先生が2人いる感覚になります。成績表は小学校の6年間はなく、学期末に親子面談で先生が保護者に子供についての話しをする程度です。日々の宿題も少ないですし、受験もなく、学年末の6月から8月の2ヶ月ほどの夏休みはそれこそ遊び放題ですので、子供たちは本当にのびのび(少しのびのびし過ぎという気も致しますが)育っています。

ここまでお話しをしますと、スウェーデンの子供たちっていいなぁと思われるかもしれませんが、実はスウェーデンの子供ならではの苦労も背負って生きています。複雑な家庭環境の子供が多く、子供自身、精神的に強くないとやっていけない場合もありますので、とても我の強い子供が多いようです。まず、10才くらいの子供で、生物学的な両親がそろっているという場合は大変まれです。多くの場合は両親が別れていて、それぞれに新しいパートナーがいることが多いのです。兄弟姉妹で、父親または母親が違うということもめずらしくありません。

しかしたとえ両親が別れたとしても、彼らにとっては自分たちの子供なので、両親が交代で子供の面倒を見ます。よく耳にするのは、1週間交代で母親の元と父親の元を行ったり来たりしていることや、平日は母親の元、週末は父親の元に行くことです。両親がそろっていないことがほぼ普通になりつつあるので、それを理由にいじめられたり、後ろめたいということは子供たちの感覚にはないようです。

そういう子供たちを見ていますと、昔ながらの日本の家庭はいいなぁと思ってしまいます。学校から帰ると手作りのおやつを作って待っている母親がいる家庭なんて、スウェーデンではまず考えられません。日本でも最近はそのような家庭は少なくなっているかもしれませんが、やはり子供にとっては、自分を何よりも大切に考えてくれる保護者のいる安らげる家庭がいちばんなはずですから。

ご意見、ご感想、ご要望をお待ちしております。長い文章にこれまで付き合って下さってありがとうございました。