ニルスの摩訶不思議な旅

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第16回 勝ち組、負け組って?

2003.5.20

さて、本日は私が日ごろ気になっていることについてお話ししたいと思います。

日本のメディアでよく目にするこの言葉「勝ち組、負け組」とは、いったい何を意味するのでしょうか。例えば、大学受験に合格した人、有名企業に就職した人を「勝ち組」、大学受験に失敗した人、仕事を失った人を「負け組」と呼ぶのでしょうか。しかし人生は山あり谷あり、つまり「勝ち組」になったり「負け組」になったりして進んで行くものです。一時の「勝ち組」で喜んでいても、いつ「負け組」になるかわからない、それだったらいちいちそんな表現を使う必要があるのでしょうか。この言葉は、人々を煽っているとしか思えません。

スウェーデンでは、このような考え方は全くありません。弱肉強食はスウェーデンには当てはまりませんし、教育や医療は国民全員の権利です。無料で教育を受けることができ、18歳までは歯科も含めて医療は無料です。教育や医療は、人間が人として生きて行くための基本だと思います。そういうことが、お金があるなしに左右されるのは残念なことです。国民全員が公平に基本的恩恵を受けられるというスウェーデンのシステムは、本当に有難いものだと思います。ですから、リストラが当たり前の昨今、例え職を失っても失業手当が充実していますし、無料教育システムを利用して、いくらでもやり直しができるのです。

スウェーデンでは、弱肉強食というより強肉弱食の世界です。以前にも「ここがへんだよ。スウェーデン」というタイトルで述べましたが、所得の高い人は高い税金を払い(つまり肉になる)、仕事に就けない人は税金から手当をもらえます(つまり税金という肉を食する)。しかし、スウェーデンでは自分がいつリストラにあうか分からないわけですから、高い税金は保険とも言えます。稼げる時に稼いでおいて、それができなくなった時に手当をもらうのです。このシステムがありますので、わざわざ個人的に貯蓄に励まなくてもいいのです。

スウェーデンでは、自分らしく生きている人がたくさんいます。お金がなくても幸せそうな人をたくさん見かけます。自然が大好きな人々ですから、自然と戯れる時間が多ければそれだけ幸せを感じる人も多いようです。お金は生活ができるだけあれば充分ですし、それ以上稼ごうとすると、自分の時間が短くなりストレスも溜まるだけでなく、税金が高くなり、結局手取りはあまり変わらなかったりします。

私は年に1回は日本に帰っていますが、東京に滞在するせいもあり、いつも何かに煽られている気がしてしまいます。家でのんびりと過ごしていると、「こんなことをしていていいのか」、「何かもっと実になることをするべきなのではないか」という気分になることが時々あります。ほしいモノのほとんど見つからないスウェーデンと違って、東京にはモノが溢れているので、買い物にも夢中になってしまいます。必要のないものも買ってしまい、後で後悔することもあります。なんとなく、メディアや世間に自分が振り回されている気がします。スウェーデンに帰ると妙にホッとするのは、まわりを気にせず自分らしく生きられる場所に戻ってきたと感じるからかもしれません。