ニルスの摩訶不思議な旅

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第7回 スウェーデンの社会システム・移民の場合
パート2

2002.6.7

現在ワールドカップのために日本に来ています。数少ないスウェーデンサポーターも日本に来てスウェーデンチームを応援しております。日本ではあまりなじみのないスウェーデンですが、みなさまもぜひ見守ってあげて下さい。

前回は移民のスウェーデン語コース(SFI Swedish for immigrants)についてお話しましたが、今回ももう少しお話したいと思います。最近はSFIのカリキュラムもかなり徹底してきているようで、今までは単にスウェーデン語能力だけでクラス分けされていたのが、出身国による教育レベルの違いを考慮し、最終学歴別にクラスを分ける工夫もされているようです。SFIには毎日日中にある集中コースと、夕方の週2回のコースがありますが、多くの人はまずスウェーデン語を習得することを第一に考えますので、集中コースに通います。

授業はスウェーデン語を学ぶだけでなく、スウェーデン社会について学ぶための野外教室もあります。ストックホルム市内にあるほとんどの博物館に見学に行きましたし、国会議事堂の見学もありました。様々な国から来ているクラスメートとの会話は、世界情勢の生情報を聞けてとても興味深いものです。ちょうど今から1年前に通っていたクラスには2名のアフガニスタン人がいました。彼らは自国情勢やタリバーンについて話していましたが、その当時私はタリバーンのことをよく知らなかったので、あまりいろいろ質問もできずにいました。その後アメリカで起こったテロ事件で、あの時彼らが話していたことがいかに大変なことだったのかが分かり、愕然としたものです。移民のクラスにいると、今までは新聞上のニュースでしかなかったものが、現実のものとして捉えられ、より世界情勢に興味を持ってきます。そういう意味でも、移民のクラスは単に言葉を学ぶだけでなく、視野を広げることもできて、とてもいい経験ができたと思っています。

SFIを卒業してすぐ仕事を探す人ももちろんいますが、多くの人々は引き続きスウェーデン語を勉強します。このコースはkomvuxという成人学校になります。ここに入るためには、入学レベル試験を受ける必要があります。この試験は3時間がかりの、語彙、文法、聞き取り、作文、面接のあるかなりハードなものです。また、移民のためのオリエンテーションコースというのもあります。スウェーデンの社 会システムやコンピュータ、履歴書や面接の仕方といった、仕事に就くために必要なことを学ぶコースです。移民のためのコンピュータコースもあります。

SFI卒業レベルは中学レベルのスウェーデン語であり、高校レベルのスウェーデン語ができるようになると、Komvuxのその他のコースに入ることもできます。ここからは一般スウェーデン人と一緒になります。Komvuxには前回も書いたように、高校卒業資格を得られる授業の他、語学やコンピュータ、プログラミングなどの専門コースもあります。その後は大学へと進めるわけですが、移民が大学に入るためには、英語圏のTOEFLのような試験があります。これがかなり難問の試験なのですが、この試験に通っていなくても、高校上レベルのスウェーデン語力があれば、入学申し込みはできるようです。日本のような大学入試という試験はなく、高校卒業資格とスウェーデン語レベルがあれば、希望の学部に申し込むことはできますが、人気のある学部には高校の成績が優秀でないとなかなか入れないようです。移民の場合はスウェーデン語のレベルがかなり高くないと難しいようです。

スウェーデン人の場合、高校を卒業してすぐに大学に進むという人よりも、高校を卒業してしばらくアルバイトをしたり、世界を放浪したり好きなことをして、自分のやりたいことを見つけてから入学をする人が多いようです。ですから20代後半は若いくらいで、30代以上の学生もとても多いのです。大学は入学するよりも卒業することの方が遥かに大変なので、卒業までこぎつける人は、入学者の20%程度のようです。

スウェーデン語が高校レベル以上になれば、移民、スウェーデン人という区別はなくなり、後は自分のやりたい道に進むことになります。仕事を探す上での職安でも、移民だからという区別はありません。もちろんスウェーデン語ができて初めて対等ということになります。それでもスウェーデン人と対等に話せるようにはならないわけですから、何か特技でもないと、就職もそうそう楽にはできません。今のスウェーデンはあまり景気がよくないので、一般スウェーデン人でも簡単には就職できないので、移民にとってもかなり厳しい情勢です。