ニルスの摩訶不思議な旅

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第6回 スウェーデンの社会システム・移民の場合

2002.4.30

4月の下旬になり、木々も青々としてきて桜も咲き出し、ストックホルムもやっと春らしくなってきました。春を通り越して夏のような気候になりましたが、この週末はまたちょっと涼しくなりました。季節の変わり目は着るものが難しいですね。

4月30日はバルボリスメッサ前夜祭です。夕方にはところどころで大きなキャンプファイヤーが始まります。キャンプファイヤーは、まだ寒さの残る5月初めに、火で作物や植物を温めようとしたことから始まり、今では長かった冬が終わって春が訪れたことを意味します。

さて、今回のスウェーデンの社会システムは、移民の場合です。私自身が移民なわけですから、私の体験談をお話し致します。

スウェーデンは人口が少ないので(900万人弱)、移民の受け入れ体制が整っています。特に戦火を逃れてきた難民の受け入れには積極的です。私が引っ越してきた98年にはコソボ紛争があったので、ユーゴスラビア移民が多く、最近ではアフガニスタン移民がとても増えました。移民の顔を見ると、その時代が分かる気がします。しかし、移民を受け入れることによる問題も増えているので、受け入れがやや厳しくもなってきてもいるようです。

さて、移民にとっていちばんの壁となるのが言葉です。スウェーデン側では、移民の人々に1日でも早く職について働いてもらいたいと考えているので、そのための支援は惜しみません。まずスウェーデン語コースですが、全ての移民が平等に受けることができます。Swedish For Immigrants(SFI)というこのスウェーデン語のコースは居住地区によって多少違いはありますが、レベル別に別れていて、定期的に試験も行われます。うれしいのはこのコースはテキスト代も含めて無料ということです。今後は変わる可能性もありますが、本代の高いスウェーデンでテキストが無料というのはとてもありがたいことでした。

無料のコースでも講師には給料が支払われているので、きちんとした講師が教えています。授業は初心者のコースから全てスウェーデン語のみで行われます。初めは戸惑いますが、私の場合はとても経験のあるすばらしい先生だったので、意味がわからなくても想像できるように教えてくれて、何とかついていくことができました。まず驚いたのは、先生が2、3日で生徒20名ほどの名前と顔を覚えてしまったことです。私などは、ユーゴスラビアの生徒たちの長ったらしい名前(セットランナーとかスラルビッツァなど)を覚えるのに半年かかったというのに。

スウェーデン語は英語に近いこともあり、アルファベットを使うヨーロッパ系の生徒はみるみる間に上達して行きました。私たちアジア系はそろって落ちこぼれです。アジア系のための発音のコースまでわざわざ開いてくれたほどです。そうこうしてこのSFIを卒業すると、次は大学に行くスウェーデン語レベルまで勉強したい人のコースの他に、高校レベルでの他の授業もあります。自国の事情で教育を受けられなかった人々のための高校卒業資格を取れるコースもあります。ありがたいのは、スウェーデンは生涯教育という考えがあるので、いくつになっても勉強ができるという環境です。ちなみに私はウェブデザインのコースに通いました。

授業料が無料の上に、学生手当てを受けることもできます。難民はアパートと生活手当てまで与えられます。スウェーデンは福祉の国ということで有名ですが、ちょっと行き過ぎではと思うこともあります。働けるのに働かず、いろいろ事情を作っては手当てを受け取ってそれで暮らしているという移民が多いのも事実です。この手当ては例の高〜い税金から支払われているわけですから、スウェーデン側としては1日も早く働いて税金を支払ってもらいたいのですが、なかなかそうもいかないわけです。