第15回 スウェーデン生活様式、まるごと日本上陸 「イケアジャパンのコンセプト」
2003.4.8
3月31日にサマータイムを迎え、やっと春がやってきたと思った4月にいきなり雪のストックホルムです。4月初めの週は雪、太陽、吹雪と、まるで1日の中に四季があるようでした。雪が積もっては太陽が照って溶かし、暖かくなったと思えば吹雪になったりと、落ち着かない天候です。早く本当の春がやってきてほしいものです。
さて、イケア(IKEA)といえばスウェーデンの家具メーカーとして世界的に有名な企業です。世界中のいくつもの都市に店舗がありますが、なぜか日本にはないのです。数年前に小さな店舗があったといううわさを聞いたことがありますが、消えるようになくなってしまったそうです。その時は、本来のイケアスタイルの店舗ではなかったようです。そのイケアが、2001年初めに、今後4、5年の間にイケアジャパンをオープンする予定と発表しました。そして今イケアは日本でどこに店舗をオープンさせるか検討の真っ最中なのです。かなり正確な情報では、2005年の秋に、東京近郊
に店舗をオープンするということです。
現在、世界でいちばん大きなイケアは、スウェーデンの南ストックホルムにあるクンゲンス・クルヴァ店です。この店舗は、ニューヨークのグッゲンヘイム美術館の建物のように丸い構造をしています。お店に入ったお客様にとって店内全てが見やすい構造になっており、一周すればエスカレータのある元の場所に戻るので、同じ場所を行ったり来たりしなくて済むようになっています。まず正面入り口を入ると、2階に上がるエスカレータがあります。エスカレータを上がってたどり着く場所はリビングルームのエリアです。
各エリアにはアイデアを
与えてくれるモデルルームがいくつもあります。モデルルームも、家族のスタ
イルに合わせて4部屋だったり、2部屋だったりして、もちろんバスルームも
ついています。コンセプトもクリアに表現されています。例えば、産まれたば
かりの赤ちゃんと小学生の子供が2人いる5人家族の家や、週末には子供たち
が遊びに来る離婚したお父さんの家、ゲイのカップルが一緒に暮らしている家
など、いかにもスウェーデンらしくバラエティに富んだ家族のスタイルを表しています。子供用家具のエリアには、サッカー狂の男の子の部屋や、宇宙飛行士に憧れる少年の部屋、ハートや赤い色でまとめた夢見る少女の部屋などがあります。オフィス家具のエリアには、アジア系旅行代理店のオフィスや、ゲイ
のカップルが営んでいるシャツのショップがあったりします。(このカップルが一緒に暮らしている家がリビングルームエリアにあります)
バラエティに富んだモデルルームを見て、自分自身のイメージを膨らまし、そこに使われている家具や小物をチェックして、ほしいものを後で自分でピックアップするのです。家具は組み立て式になっていて、自分で倉庫まで行って取り出します。その場所を教えてくれるのが、各階にいるイケアスタッフたちです。家具の在庫があるかどうかを確かめ、その家具の置いてある倉庫の位置を教えてくれます。イケアには、商品を説明したり、薦めたりする店員はいません。お客様自身が自分の目で選び、サイズを確認し、自分自身で家具をピック
アップしてレジまで持っていくのです。そのために、紙で作られたメジャーや、
メモ用の紙と鉛筆がところどころに置かれています。
リビングルーム、ベッドルーム、バスルーム、キッチンなどのエリアを見た後は、エスカレータやエレベータでグランドフロアまで下がり、小物のエリアに向かいます。そこで照明やクッションなど、モデルルームで見て気に入った商品をピックアップします。そして最後に家具を取り出す倉庫に行き着き、必要なもの全てをピックアップしたらレジへ向かいます。ショップ全体はかなりの広さなので、1日くらいは平気でつぶれてしまいます。もちろんランチも500円程度の手頃なお値段で食べることができます。ところどころにカフェテリアがあり、疲れたらコーヒーとマフィンを手にひと休みできます。これも200円くら
いの気の利いたお値段なのです。最後の最後にレジを出たところには、なんと60円程度のホットドッグが売られています。ちょうど小腹が空いたころで、お値段に引かれていつも買ってしまいます。
イケアのポリシーは、「広範囲に渡る機能的で美しいデザインの家具を誰にで
も購入できる低価格で提供すること」です。イケアの商品はいかにもスウェーデンのデザインらしく、機能的でエレガント、そして人にも自然にも優しいのです。子供の商品は安全を第一に考えています。しかもそれを安く提供するこ
とが、イケアのいちばんの強みです。店舗で働く人を最小限にしたり、工場を人件費の安い場所に建てたり、商品を消費者自らが組み立てることにより、店舗と倉庫を兼ねたりと、イケア戦略によりそれを可能にしているのです。しかも、イケアの商品には有名デザイナーの作品もあります。普通、そういったデザイナーの商品は手の届かない値段になりますが、イケアでは他の家具との価格差もなく、手頃なお値段で手に入れることができるのです。
スウェーデンでは、イケアのカタログは毎年夏に各家庭に配られ、このカタログを心待ちにしているスウェーデン人がたくさんいます。このカタログを見ると分かりますが、家具と一緒に写っているモデルたちは国際色豊かです。欧米系、アジア系、アフリカ系、ヒスパニック系など、グローバルな人たちが家具と一緒に微笑んでいるのです。もちろん年齢もさまざまです。そんなところにもイケアのこだわりが見えてきます。イケアのグローバルで多くの人たちに夢を与えたいというビジネスアイデアは、今の日本にも必要な部分かもしれません。
イケアジャパンのオープンまでまだ2年ほどありますが、今から待ち遠しくて仕方がありません。
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